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一枚のメモから、創業当時のレシピを復活!
「杉浦味淋」の熟成みりん
一般的に「三河みりん」とは、「愛知県三河地区で造られた、伝統的な製法の本みりん」のこと。
余分なものを添加せず、もち米、米麹、焼酎のみで仕込むのが特徴です。最盛期にはこの地方に20軒以上のみりん蔵がありましたが、現在も造り続けているのは、碧南市を中心に5つの蔵だけ。
今回は、熟成みりんで知られる「杉浦味淋」を訪ねました。
「杉浦味淋」は、1924年創業のみりん蔵
創業100周年を迎えた現在は、3代目の杉浦嘉信さんを中心に、みりん造りに取り組んでいます。
蔵に入ってまず目に飛び込んできたのが、創業当時の「愛櫻(あいざくら)」の看板。「誰からも愛される桜のような商品を」と、創業者である祖父 定次郎さんが命名したものだそう。そんな「愛櫻」に秘められた、特別なストーリーを教えてもらいました。
現代表の嘉信さんが蔵を継いだのは、2003年のこと。当時は大量生産や大手メーカーのみりん風調味料の波に押され、会社は倒産寸前。そんなときに偶然見つけたのが、一枚のメモ書きでした。
創業者の祖父が書き残した、みりんのレシピ
「おじいさんのみりんを造ってみたい」との一心で、昔ながらの手搾り機を手に入れ、地元で栽培される原料米や米焼酎を確保。米本来の甘みが生きた「おじいさんのみりん」を復刻しました。
しかし、最初は思うように受け入れられず、売れ残ったみりんはさらに熟成が進んでいく。
すっかり色が黒くなったみりんを舐めてみたところ、これまでに味わったことのない濃厚な甘みに衝撃が走ったといいます。杉浦味淋を象徴する三年熟成みりんは、こうして生まれたのです。
みりん造りでは、材料のもち米、米麹、焼酎を混ぜ合わせたものをもろみと呼びます。
杉浦味淋では、通常の約2倍にあたる6か月前後かけて熟成させた、半年もろみを使用。夏を越して秋に搾ることで、寒暖差で酵素が活性化し、甘みもうま味もより一層深くなるのだとか。これを昔ながらの方法で搾り、1~3年かけて熟成させます。工場の一角では、長い熟成を終えたみりんが瓶詰めされる最終工程にも立ち合うことができました。
見てください、この色の違い!
見学の最後に、一年熟成と三年熟成を使った「熟成みりんの飲み比べ」を体験させてもらいました。
一年熟成を試飲してみると、米本来の上品な甘みとスッキリした後味を感じます。
次に、三年熟成を手に取ると、濃厚な香りがふわっ。口に含むと、奥深く濃縮されたうま味とコク、甘みが、余韻たっぷりに広がります。
熟成期間でこんなにも違いが出るのかと、発酵の奥深さを改めて感じました。
杉浦味淋の看板商品「愛櫻 純米本みりん 一年熟成」「愛櫻 純米本みりん 三年熟成」は、碧南市内の酒屋さんをはじめ、県内各地の取扱店で販売されています。また、まとまった人数で事前に申し込めば、蔵の見学・直売も可能。ぜひ皆さんも、熟成による違いを感じてみてください。
●杉浦味淋
【住所】愛知県碧南市弥生町4丁目9
【電話番号】0566-41-0919
【工場見学】10名以上 (10名以下の場合は要相談) ※完全予約制
全国でも希少!
「ヤマシン醸造」で受け継がれる、木桶仕込みの白しょうゆ
続いてご紹介するのは、碧南市のもう一つの特産品「白しょうゆ」。淡い色合いが特徴で、約200年前に碧南市で発祥したと言われています。全しょうゆ生産量の中でも1%に満たない希少なもので、メーカーは全国でもわずか。碧南市内では、3つの蔵が白しょうゆを製造しています。
今回はその中から、白しょうゆの老舗「ヤマシン醸造」にお邪魔しました。
200年に渡り白しょうゆを造り続ける醸造元「ヤマシン醸造」
全国醤油品評会では、2024年に白しょうゆが二度目の農林水産大臣賞を受賞するなど、その品質が高く評価されています。
はしごを登って、桶の中をを上からのぞき込むと……表面にはまるでガトーショコラのような層ができていました。
その下では、白しょうゆの元となるもろみが活動しており、私たちの目に見えないところでも、ゆっくりと熟成が進んでいます。
今回は特別に、熟成を終えた白しょうゆを桶から出す「引分」の工程も見せてもらいました。桶の下方に設置された水栓コックを開くと、中から液体が勢いよく飛び出します。「白しょうゆ」の名の通り、しょうゆとは思えない、淡く澄んだ色合いに驚きました!
一般的なしょうゆは、原料の大豆と小麦が等量なのに対し、白しょうゆは多量の小麦と少量の大豆を配合。これにより、最大の特徴である淡い色合いが生まれるのです。
仕込んでから約3か月熟成させ、最初に出す汁は一番汁と呼ばれ、甘みもうま味も濃厚。さらに約3か月熟成させたものは二番汁と呼ばれ、すっきりした味わいに仕上がります。ヤマシン醸造では、用途や製品に合わせて、一番汁と二番汁を調合しているそう。なお、着色を防ぐため、加熱殺菌処理をしないのも特徴の一つ。白しょうゆは発酵の力がしっかり生きている調味料、とも言えそうです。
蔵の入り口にある受付事務所では、商品を購入することができます。
伝統的な木桶で仕込む看板商品「ヤマシン白醤油(特級)」は、全国醤油品評会で、過去二度の農林水産大臣賞を受賞した逸品。また、白しょうゆに様々な出汁を加えた「白だし」は、手軽に使える万能調味料として人気です。素材の色合いを引き立ててくれるから、卵焼きや茶わん蒸し、お正月のお雑煮にもおすすめですよ。
●ヤマシン醸造株式会社
【住所】愛知県碧南市西山町3-36
【電話番号】0566-41-2231
【工場見学】電話にてお問合わせください(要事前予約)
パティシエの情熱が生んだ、「Enfance(アンファンス)」の白しょうゆスイーツ
「ヤマシン醸造」を訪れたら、歩いてすぐの場所にある「お菓子の家 Enfance(アンファンス)」にもぜひ立ち寄りましょう。「小さな町から大きな幸せを」をコンセプトに、老若男女に愛されるパティスリーです。
ショーケースには、色とりどりのケーキや焼き菓子が並びます。
中でも注目したいのが、「ヤマシン醸造」の白しょうゆを使った発酵スイーツ。
「白醤油プリン」
地元出身のオーナーパティシエ 小笠原浩司さんは、ヤマシン醸造の代表とも交流があり、「料理だけでなく、白しょうゆをお菓子でも使ってもらえたら…」という一言をきっかけに、白しょうゆスイーツの開発に着手。試行錯誤の上で完成したのが、「白醤油プリン」です。
白しょうゆを加えたプリンの生地は、とろりとなめらかな食感と甘さの中に、ほんのりと広がる塩気がクセになる味わい。カラメル液にも白しょうゆを使っており、香ばしい香りがふわりと立ち上ります。
瓶に貼られたレトロなラベルデザインもかわいらしく、手土産にもぴったり。
様々な商品に白しょうゆが大活躍!
プリンのほかにも、クリームチーズに白しょうゆを混ぜた写真の「フロマージュ・ドゥ・ミカワ」や、チーズのようなコクの「白醤油マドレーヌ」、シュー皮を使った「白醤油シュガーラスク」などにも使用されているそう。
ここでも、素材の色合いを邪魔しない、白しょうゆの持ち味が発揮されていますね。
でも、まさか白しょうゆとスイーツが、こんなに相性がいいなんて……。
想像を超えるおいしさに、皆さんもきっと驚くはず!
●お菓子の家 Enfance(アンファンス)
【住所】愛知県碧南市西山町4-51-1
【電話番号】0566-43-3397
ミシュランガイド掲載!
三河の発酵調味料を使いこなす匠料理人「日本料理一灯」
白しょうゆ、三河みりんをはじめ、酢、八丁味噌、たまりしょうゆ、日本酒まで。「小伴天はなれ 日本料理一灯」は、多様な発酵調味料を育む三河・知多地方の、食の魅力を伝えてくれる一軒です。
店を営むのは、碧南市出身の料理人 長田勇久さん。東京の歴史ある料亭で修業した後に、碧南市にUターン。100年以上続く実家の料理店「小伴天」の姉妹店として、2015年に「日本料理一灯」をオープンしました。
「日本料理一灯」はミシュランガイドにも掲載されており、その実力はお墨付き!
地元産の調味料や伝統野菜を積極的に取り入れる地産地消の取組も、高く評価されてきました。
「地元の調味料のことをもっと知りたい」との思いから、様々な蔵に足を運び、生産者との交流を深めてきた長田さん。「蔵にはそれぞれ個性があり、作り手の目指す味わいも違う。三河みりんひとつとっても、蔵ごとに全く味わいが異なります」と話します。
写真は昼の部の献立の一例で、前菜からデザートまで、10品以上が並ぶ充実の内容。その、ほぼすべての料理に三河地方の発酵調味料が使われており、しかも、料理に合わせてメーカーまで使い分けているというから驚きです!たとえば、揚げ物のつゆには、穏やかな味わいで素材を引き立てる「九重味淋」。
前菜のおから煮には、存在感があってうま味の強い「角谷文治郎商店」、豚の煮物には、料理のおいしさを底上げする「小笠原味淋醸造」、デザートのシロップには、熟成感がありバランスのとれた「杉浦味淋」といった具合です。
こちらの釜炊きごはんは、碧南市特産のにんじんとしらすを主役に、「七福醸造」の有機白しょうゆで味付けした一品。
具材のにんじんのきんぴらには、カラフルな色味を生かすべく「ヤマシン醸造」の白しょうゆが使われていました。
また、茶碗蒸しには、小麦のみを原料とした甘い白しょうゆ「日東醸造」のしろたまりを使用。個性豊かな醸造調味料が、それぞれの食材・料理にピタリとハマり、より豊かで深い味わいを生み出しているのです。
献立の内容は月替わりで、食材を見てから献立を考えるという長田さん。
目にも美しい盛り付けや、豊かな味わい、食感、香りなど、四季折々の料理を五感で楽しませてくれます。
●小伴天はなれ 日本料理一灯
【住所】愛知県碧南市作塚町1丁目16番地
【電話番号】0566-48-7838
魅力的なスポットは他にもたくさん! 発酵のまち・碧南市へ出かけよう
今回ご紹介した以外にも、碧南市には魅力的な蔵や発酵スポットがたくさん! 蔵によっては、見学や体験の受け入れもあります。
皆さんもぜひ現地を訪れて、碧南市に受け継がれる発酵食文化を体験してみてください。







